試合前の静的ストレッチはNG?「60秒」が分かれ目になる理由を論文で解説
「試合の前に静的ストレッチをすると、パワーが落ちる」。この20年ほど、そう教わってきた指導者も多いはずです。2019年のレビューは、その考えを整理し直しました。結論は、1部位60秒以下の短い静的ストレッチなら、筋力・パワーの低下はごくわずか(1〜2%)。問題になるのは60秒を超える長いストレッチだということです。
この研究は何を調べたか
Chaabeneらによるレビューです。運動前の静的ストレッチ(筋を伸ばした姿勢でしばらく止める方法)が、直後の筋力・パワーにどう影響するかを調べた研究を集め、これまでの知見の変化と、そのメカニズムを整理しました。
静的ストレッチの評価は、時代とともに大きく変わってきました。
- 1990年代まで: 柔軟性が高まり、パフォーマンスも上がると考えられていた
- 1990年代後半〜: 直後の筋力・パワーを下げるとして、運動前には避けるよう推奨されるようになった
- 近年: ストレッチの長さによって影響が大きく違うことが分かってきた
分かったこと
- 1部位60秒以下の短い静的ストレッチでは、筋力・パワーの低下は**ごくわずか(1〜2%)**でした。単独で行っても、ウォームアップ全体に組み込んでも同じでした
- 1部位60秒を超えると、実践上も無視できない**低下(4.0〜7.5%)**が出ました
- 運動前の静的ストレッチ(1部位あたり平均86〜314秒)を調べた104研究のメタ分析では、最大筋力が5.4%、パワーが1.9%低下していました。ここで調べられていたのは、比較的長いストレッチです
- 有酸素運動、動的ストレッチ、競技特有の動きを含むウォームアップに短い静的ストレッチを入れると、スプリントや方向転換での筋・腱のケガのリスク低下に役立つ可能性も示されています
- 短いストレッチで低下が小さい理由として、動的なウォームアップで筋温が上がることが挙げられています
現場でどう読むか
- 「静的ストレッチは一切ダメ」ではなく、1部位あたり60秒以内にとどめ、動的なウォームアップと組み合わせるのが現実的です
- 長く伸ばしたい場合は、練習後や別の時間に回す選択肢があります
- ただしトップレベルの選手の試合直前は、1〜2%のわずかな低下も勝敗に影響しうるため、慎重に使う必要があると著者らは述べています
このレビューは複数の研究を整理したもので、ケガのリスク低下については「可能性がある」という段階です。予防効果が確かめられたわけではありません。
アスコンでの活用
ウォームアップの内容を変えたときは、選手の反応を見ながら判断することが大切です。アスコンアプリでは、毎朝のコンディション入力(疲労・筋肉痛・痛みなど)が、選手自身の直近14日の平常値と比べて4段階で判定されます。ジャンプやスプリントなどの体力測定の記録も残せるので、ウォームアップを見直した前後で、記録や体感に変化があったかを確かめられます。
まとめ
- 1部位60秒以下の静的ストレッチなら、筋力・パワーの低下はごくわずか(1〜2%)
- 60秒を超えると低下は4.0〜7.5%と大きくなる
- 動的なウォームアップと組み合わせて短く使う。トップ選手の試合直前は慎重に
この考え方を、毎日のコンディション管理に。
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