ノルディックハムストリングで肉離れは半分になる?メタ分析と再分析を読み比べる
ダッシュの瞬間に太ももの裏が「ピキッ」。ハムストリングの肉離れ対策の定番が、膝立ちから体をゆっくり前に倒していくノルディックハムストリング(NHE)です。「やればケガが半分になる」と聞いたことがあるかもしれません。その根拠になった2019年のメタ分析と、方法を見直した2021年の再分析を読み比べると、**「減る方向ではあるが、確かだとはまだ言えない」**というのが現時点での妥当な読み方です。
この研究は何を調べたか
元の研究(van Dykら、2019年)は、システマティックレビューとメタ分析です。あらゆる競技の選手を対象に、NHEを含む予防プログラムと、通常のトレーニングやNHEを含まないプログラムを比べた15研究・8,459名を集めました。
**再分析(Impellizzeriら、2021年、Journal of Clinical Epidemiology)**は、メタ分析で「どの研究を選ぶか」が結論を左右することを示すために、上の研究を見直したものです。NHEに選手を無作為に割り付けたランダム化比較試験だけを選び直して、計算し直しました。
分かったこと
元の研究(2019年)
- NHEを含むプログラムでは、ハムストリングのケガのリスク比が0.49(95%信頼区間 0.32〜0.74)で、ケガが少なくなっていました
- ランダム化比較試験8件だけでも0.52、バイアスの大きい研究を除くと0.55でした
- 著者らは「最大51%減らし、ほぼ半減させる」と結論づけました
再分析(2021年)
- 元の15研究のうち、NHEに無作為に割り付けた試験は5件だけでした
- その5件では、リスク比は0.56(95%信頼区間 0.20〜1.52)
- 新しく見つかった1件を加えても0.59(95%信頼区間 0.27〜1.29)
- 信頼区間が「1(差がない)」をまたぐため、効果は**「まだ結論が出ていない」**とされました
現場でどう読むか
- 再分析は「NHEに効果がない」と示したわけではありません。どちらの分析でも、数値はケガが減る方向を指しています
- ただし、厳密な試験に限ると不確かさが大きく、「必ず半分になる」とは言えません
- また、NHEを含むプログラム全体の効果なのか、NHE単独の効果なのかを分けて考えるのは難しいという限界もあります
- 現実的には、ケガ予防の取り組みの一つとしてNHEを取り入れつつ、それだけで安心しないことです。負荷の強い種目なので、少ない回数から始め、選手の反応を見ながら増やしていきましょう
ケガを減らして試合に出続けることは、選手がシーズンを通して伸びていくための土台でもあります。だからこそ、根拠の強さを正しく知ったうえで取り入れることが大切です。
アスコンでの活用
アスコンアプリでは、毎朝のコンディション入力で筋肉痛や痛みを記録でき、選手自身の直近14日の平常値と比べて4段階で判定されます。NHEのように筋肉痛が出やすい種目を取り入れるときは、その変化を見ながら回数の増やし方を決められます。
なお、アスコンはケガを予測・診断するものではありません。判定は声をかける選手を見つけるための目安です。
まとめ
- 2019年のメタ分析は、NHEを含むプログラムでハムストリングのケガが「ほぼ半減」(リスク比0.49)とした
- 厳密な試験5件に絞った2021年の再分析では、リスク比0.56で「まだ結論が出ていない」
- 減る方向ではあるが過信しない。予防の一つとして、少ない回数から取り入れる
この考え方を、毎日のコンディション管理に。
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